学習

 学習といっても、勉強のことではありません。

心理学における学習の研究はパブロフから始まったとみなして、良いでしょう。
パブロフの実験はかなり有名ですので、知っている方も多いと思いますが、ここでは簡単に説明しておきたいとおもいます。
 犬の口の中に細いパイプを入れて、唾液の量を測定できるように、しておきます。そして、餌を見せると犬の唾液が分泌されるのを確認したら、餌を与えるたびにベルを鳴らす、と言う動作を繰り返すと、犬はやがて、ベルの音を聞いただけで唾液を分泌するようになるのです。これを条件反射と呼びます。この一連の実験のなかで特筆すべき実験があります。それは、ベルの音を2種類使って、一方のベルの音(例えば高い音)では餌をやりもう一方の音(例えば低い音)では餌をやらない、と云う実験をすると、犬は見事に音の差を判別したそうです。そして更に音の差を徐々に近付けていって、判別不能な差を見つけようとした時、犬が音の差を判別出来なくなったら、犬が狂暴になり、それ以上実験が続けられなくなったそうです。
 これを犬側から見れば、同じ音が鳴っても、餌をくれたり、くれなっかったりする飼い主にたいして、激しい不信感を持ってしまったと見るべきでしょう。この不信感こそ人をして狂暴ならしめる最大の原因です。

次に

 スキナーと言う人が行った実験について見てみましょう。彼はレバーを押すと餌が出てくる様なかごを考案して、その中へねずみを入れて実験したのです。このときねずみは最初うろちょろ走りまわっていますが、偶然レバーに触れると餌が出てくるわけです。それに興味を抱いたねずみは餌の出口付近を中心に動き回りますが、何度かレバーに触れ餌が出てくる経験をすると、ついにはレバーと餌の関係を学習するわけです。これも一種の条件反射ですが、一般に「学習」と呼びます。そしてこの時のえさの事を「強化子」と呼び、このようなかごを、スキナー箱と呼びます。

回避学習

 この様な強化子を使った学習の外に、罰を使った学習も考えられる訳です。動物実験ではもっぱら、電撃を使います。そこで動物は危険を回避しようと学ぶために、回避学習と呼びます。
 例えばテーブルの付いた椅子に猿を固定します。そして、テーブルには押しボタンとランプがセットされています。
そして、ランプがついたら、ただちにボタンを押さないと電撃を受けるようにセットされているのです。この実験では学習力は早いと報告されています。しかし長時間の実験で猿は胃潰瘍になったとも報告されているのです。この様な回避学習は危険を回避する、とりもなおさず生命の危機に対処するメカニズムですから、早く確実である必要があるわけです。

それに関した

生理学的実験は興味があります。危機に直面すると動物は恐怖ホルモンであるアドレナリンが分泌されます、長時間恐怖状態が続くと激しい疲労が生じます、そこでストレス解消の目的で、副腎ホルモンが分泌され始まるのです。この副腎ホルモンを分泌させる為に脳下垂体から「副腎ホルモン放出ホルモン」(ACTHといいます)が放出されているわけです。このACTHをラットの脳に注入すると、ラットの学習能力が向上する事が観測されているのです。

と言う事は

 人間の学習にもこれを利用出来ないか?とも考えられるのです。そして答えはYESです。現在のように試験の成績だけで選別する方式の場合は、かなり高い成功率を持っています。スパルタ教育で知られるある塾ではかなりの実績をあげているのです。スパルタとはご存知のように古代ギリシャの都市の名前です。スパルタで優秀な戦士を作り出すために考え出された教育方式をスパルタ教育と呼ぶわけです。ですから確かに試験を突破すると云ったような一面からだけ見た場合にのみ有効なのです。そしてここでは詳細な解説は、はぶきますが、回避学習には副次的に病気も含め身体的不具合や精神的病や、高学歴の犯罪などのリスクがいつも付きまとっていることを、念頭に置いておいてください。

その他にも

 セリグマンと言う人が行った回避学習はうつ病には学習性のものもありうると、いう証明の為に行われたものです。犬を檻にいれ、出入り口を開けておきます。しかし犬が外へ出ようとすると、電撃を受けるように作られています。
 犬は何回も外へ出ようとしますが、その度に電撃を受けることですっかり、ふさぎこんで、2度と外へは出ようとしなくなったそうです。実験が終わって電撃を切ってもなかなか出れなくなったようです。

もう一つ

 はとの実験では、スキナー箱でレバーをつつくと餌が貰える学習をしたはとを、レバーををつつくと電撃をうける箱に入れたところ、はとは狂暴になったそうです。これは矛盾学習と言います。狂暴なはとなんてのは、ちょっと想像つきにくいですけど、凶暴性には少なからずこの矛盾学習が関わっています。前述のパブロフの犬でも餌をくれるはずのやさしい飼い主とベルが鳴っても餌をくれない飼い主の矛盾に悩んだ結果の凶暴性ともとれるのです。

 人間では

 親が自分の感情的都合だけで子供を怒ったり、やさしくしたりすると子供の精神はおびただしい混乱をおこします。
しかし、人間には多少の矛盾学習を克服出来る機能がある為、あまりひどくない場合はなんとか、乗り越えられますが(とは云え潜在的負担は残ります)これがひどくなると、ついには、暴れる以外の選択肢が無くなってしまうのです。

 親が子供をからかっている時、子供の反応を見間違えると、矛盾学習になってしまう場合があります。からかっている側は楽しくて良く解らないのですが、からかわれている側からは、ただ虐められているとしか、感じない場合があるのです。勿論親には自覚はありません。

 
 

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