考える

 
   自我の成長を止めているものは勿論恐怖心とそれを抑えつける為の怒りです。すなわち恐怖心は潜在意識に閉じ
こめられて、容易には表面化しません。表面的には「漠然とした不安」と云う形で意識されるのが普通です。
ですから、自己修復とは、この恐怖心を抑えるのではなく、解消していく行動です。
 両親からのしつけでやりたいのに出来なくされたものを、度胸をもって行動すると「なんだ、別に怖くないじゃん」と
云う感覚が生じて、現実認識が進むのです。この現実認識を繰り返す事が、自己修復の始まりなのです。
しつけが理性で行われるわけではなく、自動的に行われると云う意味は。両親がもっている脅迫観念をまるまる子供
に移植すると云う意味ですから。(同じものを同じように怖がっている)子供が自己修復行動を起こすと、両親は
非常に怯えて激しい抵抗を示します。時には病気になることさえあります。この抵抗は非常に激しくしばしば子供を
混乱させるのです。この綱引きのなかで行動化しても、自己修復はおこりません。ですから出来れば両親には
内緒で行う事をすすめます。

この様にして

 現実認識が出来て恐怖心が薄らいだら、次は自我の成長です。自我の成長とはすなわち考える能力の開発です
人間は誰であれ頭の中でたえず考え続けています。まさに考える葦と言えるでしょう(なんで葦なのかはちょっとわか
りません)しかし、自我の成長が止まっている自我喪失状態の人は、考えている内容が少し違うのです。
むかし、私が病院の付き添いで一日中病室にいたとき、精神科のベットがいっぱいなので、といって一晩だけ入って
来た初老の婦人は、休むことなく小さな声で喋り続けていたのです。最初は気にも留めなかったのですが、だんだん
耳につくようになり、聞くとはなしに、聴いていると「なんにも私は悪い事してないのに」から始まって誰それがどう言
ったので私がこういったら、誰それがこう言った、と云うような事をえんえんと喋って「なんにも私は悪い事してないの
に」に戻って、これをまさにエンドレスに繰り返し喋っていたのです。なんらかの障害で考えている事が止められずに
直接口をついて出てしまっていると思われました。

人間の頭は

 誰であれ絶えず喋り続けています。座禅や瞑想をして、頭の中に「黙れ」と命令しても決して黙る事はありません。
この機能が考える為に必要なのですが、強い恐怖心を持っていると、「いいわけ」や「他人に対する攻撃」のぐるぐる
回りの思考しか出てこないのです。なにか一つ行動をおこすとその行動に対する他人からの攻撃のあらゆるパター
ンを想定して、いいわけや反撃をシュミレートし続けるのです。非常に疲れます。現実認識が出来れば「そんな馬鹿
な事」と思われるものまでシュミレートしてしまう為に、脳の中は絶えずビジー(いそがしい)なのです。
この為有益な考える事はまったく苦手になってしまうのです。これが自我喪失状態の人の頭の中身です。当然言い
訳出来そうにない行動は起こせないのです。すなわち自分に責任がかかって来そうなものからは逃げ回る事になり
ます。しかし責任のある仕事は魅力のある仕事が多いので、積極的に行動を起こす人に対する嫉みはかなり強い
ものになりがちです。

この状態から

 抜け出すために、怒りで行動を起こし「なんだ思っていた様な事は起こらなかったじゃないか!」と云う経験をかさ
ねるのが自己修復です。そうすれば、脳に暇が出来ていろんな有益なことを考える余裕がでてくるのです。これが
自我の成長につながるのです。考えると云う事は必ずしも答えを出さなければならない訳ではありません。
なにか疑問が生じ、問題意識を持ち、自分が持っている知識の範囲で考え続ける。そうすると、次にどんな知識が
必要かが出てきて、どうすればその情報が得られるかを考え、知識を増やし、また考えつづける。この繰り返しの
中で、自我は成長し続けるのです。この様にして得た知識は脱落しません。中間段階で色々な答えも出てくるかも
知れません。それが自分の考えとなっていくのです。

ですから

 自分の好きなもの、興味のあるものなら、考え続ける事が可能ですが、興味のないものを考えようとしても、数秒
であきてしまいます。興味のあるものから入っていって、そこから広げていけば、非常に幅のある知識を習得する
事が可能です。ですから、例えばパズルの様なものでも、すぐ答えをみないでひたすら考え続けてから答えをみれば
自分が考えた軌跡の中に、答えを導き出せそうな部分が必ず出てきて、印象が深くなり、忘れることがなくなるので
す。学校の勉強のようなものでも、先生が余裕をあたえてくれさえすれば、考えて考えて自分では答えが出せなかっ
たとしても、その痕跡は大きな知識になれるのです。これが自我の成長です。

自我が

成長しさえすれば、どんな場面に遭遇し様とも必ず乗り越えられる自信が湧いてきて、何事にも積極的に行動出来
る様になります。それは人生を謳歌出来ると云う意味です。いつまでもぐるぐる回りの思考を続けている人は、常識
にとらわれ過ぎているので、勇気を持って時には開き直って、常識をくつがえすことをお勧めします。そこから「自分
自身」と云う物が発生してくるのです。

 あくまでも、答えを出す事が重要なのではなく、考える事それ自身が重要なのです。

 
 

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