●日本について 気になっていること

日本を離れて暮らしていても日本のことはとても気になり、日本の新聞やインターネットで情報を得ています。
そんな中で2つばかり気になっていることがあります。
○「措置制度」から「支援制度」へ

「えんとこ」という映画、ご存知ですか。これは身体に障害を持つ遠藤滋さんと 彼を支える介助の若者たちとの日常を撮ったものです。
数年前たまたまこれを見た時、ちょうど私も障害のあるかたの自立生活の介助の有償ボランティアをしていました。
遠藤さんの生活を囲む介助の若者達の様子が生き生きと描かれたこの映画にとても共感を持ち、今もインターネットで
「えんとこ」のHPを時々見ています。それで知ったことなのですが、平成12年6月に社会福祉事業法等の一部が改正され 
来年からこれまでの「措置制度」(行政がサービスの受け手を特定し内容を決定する)から新たな仕組み「支援費制度」に変わるそうです。
 「支援費制度」は 障害者自らサービスを選択し、契約に基づきそれを利用するという仕組みで 障害者の自己決定を尊重し、
事業者との対等な関係に立つことにより利用者本位のサービスが提供されるということです。
 一見とても良い制度のように思えますが これには落とし穴があり、実際にこれまでの制度を利用して生活している人にとっては、
必ずしもよい制度とはいえず それどころかせっかく築いてきたその人なりの暮らしを崩すことになりかねません。 
遠藤氏は この落とし穴を「憲法に保障された基本的人権、中でもその根底となる生存権に関する視点が欠落している」と危惧しています。
これまで行政の責任としてあった福祉を 民間の指定業者に任せるということになると、自己責任の名のもとに 
もしなにかトラブルが起こっても行政は関知せず、当事者(利用者と事業者)間で解決しなければならないことになります。
いくら自由に介助を選択できるといっても 選択肢が少なかったり事業者のサービスが介助を必要とする人に沿うものが無かったらどうでしょう。
市場原理の導入によってサービスの質が向上するといっても 介助が必要なほどの障害者で高額の所得を得られる人など
まずいないでしょうから よほど金持ちでもない限り、かえって自己負担分が本人やその家族にとって大きな負担になるおそれがあります。 
また落とし穴の一つに 利用者が自由にそのサービスを選択するばかりでなく、その逆もありうるということです。
これは既に介護保険制度実地後に問題になっていますが 手のかかる(つまり介護の必要の大きい)お年寄りほど事業者から
敬遠される傾向にあります。民間の事業者は利益を優先させる必要がありますからコストの問題から当然こういう場合が生じてきます。
さらに 厚生省は「介助を行なうもの」に対し「ホームヘルパー」や「介護福祉士」等の資格を義務付けようとしており、
そうなると遠藤さんの「えんとこ」のような 学生や主婦、会社員など「無資格」の有償ボランティアは介助者として関わることが出
来なくなります。これは障害者が必死で作り上げてきた生活、介助体勢の崩壊につな がります。
これを知ってビックリしました。わたしが少しですが介助していたかたも遠藤さんのように、公的なサービスと自身で介助者を育成し、
その有償ボランティアをやりくりしながら積極的な自立生活を送る魅力ある女性でした。
そういう関わりが一般の人と障害のある人との接点になり よい面が多くあることを大切にすべきと思います。 
★こういった障害のあるかたの生活を知るためにも、ぜひ映画「えんとこ」をご覧になって下さい。
障害をもつ人の暮らしという面だけでなく「生きること」やそして何より私たちが忙しさの中に忘れている「大切なこと」・・・
人との信頼やふれあいの温かさに気づかされます。

本・ビデオになっています。上映会も時々あるようです。下記にお問い合わせください。
(本)定価1,500円 送料1冊200円/2冊250円 (ビデオ) 定価5,000円 送料500円
問い合わせ先:〔いせフィルム〕 TEL.03-3406-9455 FAX.03-4506-9460
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