Depelted(劣化)という名前、問題ですよね。多くの人が指摘しています
が。
ウラン廃棄物、放射性廃棄物のほうがまだましか。金属毒性はちっとも劣
化していないし、放射性毒性についてもU235の割合が減ったからといって
安全とはいえない。兵器として使われた場合は、高温で燃えて酸化ウランの
微粒子になりますが、このとき水溶性から不溶性に変化し、呼吸などで体内
に取り込まれて残留し、アルファー線を出し続けて、周囲の細胞(の中の遺
伝子など)を著しく損傷することこそが問題だからです。

「劣化ウラン」という言葉だと、放射能が弱くて安全だ、という感じがしてしま
います(それが狙いなんでしょうけどね)。

アルファ線の長さは人間の細胞の2個分ぐらい。でも球形に放射しますから、
たった一つの酸化ウラン238分子でも、数十個の細胞に届くことが可能です。
ここから細胞の異変がはじまり、癌や白血病や先天性障害などを誘発して
いく。卵子や精子が傷つけば、遺伝子情報が狂い、後々の世代にも影響を与
える。体内被曝した人は生きている限り、アルファー線の超短波攻撃にさら
され続ける。やがて亡くなって灰になっても、ウラン238はまた大気に放出
され、植物や動物に取り込まれ、いつか誰かの体に取り込まれていく。

これが45億年(でやっと半減)の10倍以上の期間、延々と繰り返されるわ
けですからね(その前に人間はいなくなっていますが)。

そもそも、原発に必要なU235を3−5%に濃縮した濃縮ウランだって、
残りは全部ウラン238(95−97%)です。槌田敦さんなどが長らく指摘し
ているのは、日本が原発に固執するのはエネルギー問題ではなく、この
ウラン238が原子炉の中で中性子をとりこんで(核分裂とはいいません)
できるPu239(プルトニウム)が欲しいからだ、って。ご存知のとおり、プ
ルトニウムはそれ自体が猛毒で、U235同様核分裂しますので原爆の材
料になります。最近の原爆にはヒロシマ型のU235は使われず、もっぱら
Pu239が原材料です。これこそが日本政府が確保したい(もう十分もって
いるけど)ものだ、って。

確かに経済的に完全に破綻している核燃料サイクルにどうして固執するのか
(六ヶ所村、敦賀のもんじゅ)?電力会社でさえやりたがっていないのに・・・、
というのを追求しつづけると、ああ、日本政府は小型核兵器にも使える高純
度プルトニウム239が欲しいんだ、というのが、見えてきます。

現在世界で何基の原子力発電所が運転されているか、ご存知ですか?
http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/qa/00/sekai/01-008.html

世界中に原子炉は436基(2002年度)稼動中です。66が建設・計画中。
103がアメリカ、59がフランス、そして53が日本。これで世界の約半分。
次に多いのがロシア(30)、イギリス(31)、ドイツ(19)、韓国(18)な
どが続
きます(発電設備だとドイツが4位)。これらが稼動される限り、濃縮ウランは
生産され続け、大量の「劣化」ウランが生み出され続けます。

もちろん、まず最初に劣化ウラン兵器の全面禁止を私たちは求めなくては
いけませんが、長期的には原子力と化石燃料からの脱却に向かわないと、
人間がこの地球で生きていける時間は、さらに短くなるでしょう。私たちの母
なる星・地球。もうすぐアースデイですね。私は九州で講演をしています。


田中優さんが「自然と人間」1月号に書かれた文章がとても参考になります。
ぜひご一読を。とてもいい雑誌ですよ。購読申し込みはこちらから。星川淳さん
や森沢典子さんも連載されています。
http://www.n-and-h.co.jp

きくちゆみ
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「社会変革の新たなツール」(「自然と人間」1月号より)
                                  田中 優
世界を変える自然エネルギー
 今入ってきたニュースによると、ロシアは地球温暖化防止の条約から離脱しそうに
なっている。これで地球温暖化の猛威は防げなくなる。南のさんご礁の島の水没も、
絶滅が危惧される生物も、失われる氷河も止められなくなる。しかし本当に止めたい
と思うのなら、方法はある。自然エネルギーを利用し、化石燃料を使わないことだ。
大方の人にとって、自然エネルギーの評価は「子どもの玩具」程度のものだろう。認
めたにせよ評論家が言うように「密度が低い」とか、「化石燃料や原子力の補完物
だ」というレベルだろう。しかし自然エネルギーはそんな瑣末なものではない。いう
ならば根本から社会のあり方を変えることのできるツールなのだ。それは経済的なレ
ベルでも十分競争可能なレベルに達しており、むしろ化石燃料に対する隠された補助
金をなくすなら、明らかに経済的に優越している。違うのは既成の石油産業の利権に
ならないことだけだ。自然エネルギーを心情的に応援しても意味がない。また従来型
のエネルギーに接木して使おうとする発想では役立たない。もしあなたが現在の戦争
や、経済のグローバリゼーション、環境破壊の世界を変革したいと望むなら、そのポ
テンシャルをきちんと認識すべきだろう。

石油獲得戦争の世紀
 現在のアメリカによる侵略戦争は、石油のためである。イラク侵略の前、英米はそ
の理由をこう説明していた。「イラクは大量破壊兵器を持っている、ニジェールから
ウランを輸入し、核兵器の開発もしている、イギリスを45分以内に攻撃できる、9
11のテロリストを支援したのはフセインだ、フセインの圧政下で人々は民主化を望
んでおり、米兵は諸手を挙げて歓迎されるだろう」と。しかし事実は逆だ。大量破壊
兵器は存在せず、ニジェールからウランを輸入したとされる文書は偽造であった。大
量破壊兵器である「デイジーカッター」、地雷類似の効果のある「クラスター爆
弾」、放射能汚染する「劣化ウラン弾」を用いたのはアメリカであってイラクではな
い。ブッシュは今頃になって「イラクが911に関わったと信じるに足る証拠は何も
ない」と表明した。「米軍はイラクの人々から歓迎される」と言ったラムズフェルド
国防長官に至っては、「私はそんなことは言っていない、誰かの発言を間違えたので
はないのか」と開き直る。
 この侵略戦争でアメリカの得たものを見てみよう。まずはアフガン。攻撃を始めて
から四ヵ月後、アメリカは「トルクメニスタンからアフガンを抜けてインド洋に至る
パイプラインの計画」を復活させた。タリバン政権は911の二ヶ月前の7月、この
パイプラインをめぐる秘密会議でアメリカの提案を拒否していたのだ。会議の後、パ
キスタンの外交官は「アメリカとタリバンは互いに銃口を向け合って引き金に指をか
けた状態だ、直ちに戦時に備える必要がある」と自国に連絡している。アフガンの北
西のカスピ海などにある世界屈指の油田地帯は、アメリカの嫌いなロシアとイランに
囲まれ、インド洋に出せなければヨーロッパを経由する。アフガンが拒否する限り、
アメリカが自由に運び出すことのできない油田だった。それを解決したのがアフガン
爆撃だ。
 一方のイラクには確認埋蔵量で世界第二位の油田がある。しかも採掘価格が極めて
安い。加えて経済制裁のために10年以上も調査がされず、一部では世界最大のサウ
ジすら凌ぐ油田があると噂される。アメリカ自身の油田はアラスカを除けば枯渇に近
づき、世界屈指だった油田もあと数年で取れなくなる。アメリカはイラクを侵略する
と、文化財の窃盗をそそのかして博物館を完全に破壊させる一方で、石油省だけは保
護し、他国や国連の関与を求めても石油だけは自国の企業に独占させた。イラク復興
という名の建設需要もアメリカ企業が独占し、その費用もイラクから輸出する原油か
ら支払われる仕組みにした。これがアメリカの得た「戦果」である。

隠された石油価格と自然エネルギー
 石油はオイルショックが落ち着いて以降、金さえ出せばどこからでも買えるただの
原料に過ぎなかった。しかし状況は90年半ばに変わる。エネルギーを自給していた
中国が、石油の純輸入国へと転落したのだ。93年に純輸入国になった中国の石油消
費は、02年時点ですでに世界第二の消費国「日本」を追い越し、03年には純輸入
量でも日本を追い越す。しかも中国が他国で開発する油田では、中国以外に輸出させ
ない。これが国際的な石油需給を逼迫させ、再び石油を「権益化」させたのだ。いま
や世界は石油獲得戦争の時代に入っている。テロ対策の名目でアメリカ軍が駐留する
フィリピン・ミンダナオ島は実は油田があり、50万人が難民化させられている。麻
薬撲滅を理由としてアメリカ軍が枯葉剤を撒いているコロンビアの地域も油田があ
り、一方アメリカが解放したはずのアフガンは、タリバン政権時代の19倍も麻薬が
栽培されるようになっている。ロシアが弾圧し、欧州が押し黙るチェチェンはロシア
とヨーロッパを結ぶ石油パイプラインの線上にあり、中国が弾圧する新疆ウィグル自
治区にはタリム油田がある。他にも人権侵害の続くインドネシア・アチェ、東チモー
ル、アフリカ西岸地域と、紛争の土地は油の上にあり、石油は血と共に流れるのだ。
 その石油業界にとって、石油価格が上がることは悪夢である。サウジの石油相は以
前からこう述べている。「石油の価格は高くしてはならない。高くすれば代替エネル
ギーの価格に負けてしまい、二度と売れなくなる」と。今現在、風力発電を始め、自
然エネルギーの発電単価は着々と低下を続けている。現時点で世界で最も安い発電方
法は、風のよく吹く地域の風力発電となった。自然エネルギーは急激に実力をつけ、
風力発電は年率30%を超える勢いで世界に設置され続けている。太陽光発電装置も
安くなり、あとわずかで電力会社から購入する電気価格に追いつく。もし石油価格が
危険な高値に至り、それが長期的トレンドだと感じられてしまえば、この石油支配の
世界は滅びるのだ。
 そのため石油は人為的に、極めて安値に保たれている。今回のアメリカのイラク侵
略について見れば、アメリカの軍事費はイラク原油の輸出価格の20年分に相当す
る。軍事費は本来石油の「コスト」である。それを含めば石油はずっと高いものにな
る。さらに環境のコストもある。山火事はカリフォルニアだけでなくカナダでも起き
ている。そこでは冬の気温が暖かくなってキクイムシの卵が越冬できるようになり、
そのせいで山の木が食い荒らされて枯れ、森がまるで薪の山になったことが山火事の
原因だっだ。カリフォルニアの山火事だけでも20億ドル以上の損害、カナダでも数
億ドルだ。これだけでイラク原油の年収の一割を超える。また、南太平洋のサモアで
は、大きくなったハリケーンによって大地が家ごと80メートルも削られていた。こ
れも温暖化を引き起こした化石燃料が負担すべきコストだ。
 その一方で石油価格の安さこそが、今の「グローバル経済」を支えている。もし原
油が高ければ、流通コストの上昇によって遠距離からの輸出は不利になり、国際的に
取引するよりも近距離の作物を流通させる方が有利になる。現に外貨がなくて石油を
買えない途上国では、都市農業の生産比率が伸び続けている。しかも国境線を越えて
貿易する運搬の燃料費は課税されない。たとえば青森県から東京に運ぶトラックの燃
料には大きな税がかかるのに、海外から運ぶ船の燃料は無税なのでかえって安くなる
のだ。石油にコストを正当に負担させると自然エネルギーの方が桁違いに安い。石油
利権と価格コントロールは、世界戦争、地球環境の破綻、経済のグローバル化と密接
につながっているのだ。

エネルギーのシフトを
 自然エネルギーを主流のエネルギーに変えるとしても、従来の化石エネルギーに接
木するものではない。各地に生まれる自然のエネルギーを中央集権の送電線に流し込
んだのでは、その良さが半減してしまう。実際、電力会社最大のコストは送電線にあ
るのだ。自然エネルギーは地域分散型である。その特徴を最大限生かして、各地で自
給していく方向性が重要だ。そのためには自然エネルギーを電力需要のプールにただ
流し込むのではなく、その前にプールの大きさを改善しておく必要がある。今家庭で
使っている電力は、いわば大きすぎるプールだ。しかしこのプールは、壁ごと狭める
ことができる。高効率な製品に買い換え、待機電力のような「無効な需要」を取り去
り、さらには長寿命で買い替えのサイクルを遅らせ、リサイクルで廃棄時のエネル
ギー消費を回収することで。
 今、家庭内で電気の三分の二を消費しているのは「エアコン・冷蔵庫・照明・テレ
ビ」の四天王だ。これをたとえば省エネ型の冷蔵庫に買い換えると、8年前の同型製
品に比べて電力消費量が85%も減る。他の製品も半分程度まで省エネを実現してい
る。他国をはるかに凌ぐ省エネ家電製品を生み出した企業の努力によって、家庭の電
力消費は半分にすることが可能になっている。しかも省エネ製品の買い換え費用はわ
ずか数年で回収できる。私たちは現に地域で、新品の冷蔵庫を、安くなる5年間の電
気料金と引き換えに届ける仕組みを実施している。年間2万円以上安くなる電気料金
のおかげで、タダで省エネ冷蔵庫を届けても元が取れるのだ。冷蔵庫の生産と廃棄の
エネルギーは全体の1割に過ぎないので、1年半以上使ってもらえればエネルギー的
にもマイナスにならない。こうして省エネした上で自然エネルギーを導入すると、そ
の価値が明瞭になる。国の愚かな政策の変革を待たなくても、自然エネルギーで自給
する社会が経済的にも成り立つのだ。これが「省エネと創エネ」を同時進行させる
「自然エネルギーへのシフト」である。こうした「省エネ」を施した後に自然エネル
ギーでエネルギー収支を合わせようとするなら、従来の半分の設備(平均的な日本の
世帯で2キロワットの太陽光発電設備)で現状の生活が自給できる。その広さは屋根
にしてわずか八畳ほどの広さにすぎない。このエネルギーを地域で集約し、相互に供
給するなら、遠くから送電線をつなぐ必要はなくなるのだ。
 これによって社会の形は変わる。エネルギーは地域に生まれ、中央集権ではなく地
域分散型の生産形態を生み出す。これは現在の石油コンビナートのピラミッド社会と
は対極の形だ。石油を中心として発電、ガソリンから、化学・プラスチック産業に至
るまでのピラミッドを作る石油社会から、地域発の分散型の社会にシフトする。これ
まで辺境とされてきた地域がエネルギーを得て生産・事業地になり、追い詰められて
いた人々が自立して生きられるようになる。とりわけ途上国では、これまで貧困と絶
望のうちにテロリストの養成所のようになっていた地域(冗談ではなくそうした地域
を知っている)を、誰にも奪うことのできない生産の地に変えるだろう。これが自然
エネルギーの真価だ。私たちに嘆いている暇はない。現在の社会を変えるツールは存
在する。私たちは、それをどう使い、どう破壊と破綻に先立って実現させるかを求め
られているのだ。

動画