《 退役米海兵隊員グレッグ・ニーズ氏の手紙 》
(日本語訳:原文を新聞に掲載予定)ブッシュ大統領殿

私はこの国によく尽くし1970年に栄誉ある退役となった元海兵隊軍曹です。このような手紙を書くのは初めてですが、役人のチェックをうまく通り抜けて無事にあなたの手元に届くことを祈ります。多くのアメリカ国民同様、私たちが目撃した2日前の死と破壊におどろきとショックを受けました。いまやっとそのショックから立ち直りつつありますが、我が国と世界の国々がおかれている悲しい状況が心配です。私たちは恐ろしい攻撃を受け,たくさんの同胞が苦しみ死にました。虐殺とその犠牲者やその家族の苦しみにやり場のない深い悲しみを覚えます。貴方も同じように苦しんでおられると思いますし、怒りや焦躁、そしてはっきりと仕返しをしたいという気持もよくわかります。このような厭うべき犯罪行為に対して、それは当然で正当化できる反応でしょう。しかし、大統領には慎重にことを進めることを忠告したいのです。私たちはいま危険な状況にあります、そしてここでの私たちの過ちはすでに世界に渦巻いている暴力を容易に拡大することにもなります。

 大統領閣下、あなたは今やアメリカ合衆国が単に恐るべき経済と軍事大国以上のものだということを世界に示す素晴らしい機会を持ったのです。 アメリカが人類の理解と憐れみの英知に導かれている国というだけでなく、国際法に従う法を守る信頼できる民主国家であることを世界に示せるかどうかは貴方次第です。あらゆる法I手段をもちいて、この恐ろしい犯罪の犯人を確定し、しかるべき法定で裁いていただきたい。世界が望んでいる正義を彼らにこそ与えてほしい。しかし、これだけはお願いしたいのですが、この恐るべき犯罪のためにそれがアメリカ人、イスラエル人、パレスチナ人、あるいはどの国民であれ、これ以上無実の人を犠牲にしてはいけません。

我が国の爆弾と兵器が無実の犠牲者のいのちを奪ってしまうことがあまりにもよく起こります。軍事的な言い方では「副次的被害」などとされていますが、実際は殺人とまで言わなくも大量殺戮だと思います。私たちにさらに多くの無実のいのちを奪う権利があるのでしょうか。それはまたひとつのテロではないでしょうか。私たちは、世界貿易センターを襲った人たちのレベルまで下がるべきなのか、それとも高い見地に立って、高い法と道徳の基準を保つべきなのでしょうか。貴方はこれを悪の行為と表現しました。そのような扇動的な言葉を用いれば単に状況を悪化させるだけでしょう。そのような言葉はいとも簡単に報復を叫ぶ群集心理を刺激するだけです。このような時こそ私たちに必要なことは、キリストが諭した憐れみの精神であり、また世界中の人間の平和と繁栄と民主主義という私たちの真の目標に到達するための冷静な理性です。

大統領閣下、尊厳と英知を持って私たちを導いてください。そしてこの瞬間猛り狂っている私たちの心の原始的な部分に力を貸さないで下さい。南アフリカ共和国のネルソン・マンデラが行ったように、真の理解と毅然とした正義を求める偉大さと力と勇気を持ったリーダーであることを世界に示してください。この攻撃は悪の行為とみなすより、暴力と破壊しか自分たちの声を訴える術がないと信じた絶望した人間たちの恐ろしい最後の行為だと思います。非常に重要なことは、彼らが恐ろしい不正な手段をあえて使ったことを私たちが知ることだけではなく、自己の命を犠牲にするという最高の英雄行為に訴えるというかれらの絶望にも耳を傾けることです。元海兵隊員として、自分が真に信じることに自己の命を捧げることの意味は理解しています。この人たちは過った恐るべき指導を受け、憎しみを植え付けられ絶望したのであって決して卑怯とか悪の人間ではないと信じます。

 もし私たちが本当に憎しみと暴力をなくそうとするのなら、彼ら自身の眼では、自分たちのいのちと生活を奪おうとする巨大なゴリアテに立ち向かう小さな英雄ダビデに自分たちを見ていることを理解する必要があります。もちろん彼らの考えに同調する必要はありませんが、もし私たちが永続する平和を望み、私たちがとても大事にしている市民の権利や自由がすべて奪われるような閉ざされた世界にしたくないなら、彼らを理解しなければなりません。

何ヶ月か前に一人のパレスチナ人の子どもが父親の両腕に何時間も抱かれている写真が雑誌に載っていました。銃弾戦に巻き込まれ弾に当たってその子は死んだのですが、そのとき父親は助けようにも動くことができなかったのです。貴方はこの父親が感じたにちがいない苦しみ、痛みそして不正感を想像できるでしょうか。貴方自身父親として自分の子どものいのちが消えつつあるのに自分は動くことができずなすすべがない状況をどう感じたでしょう。ニューヨークとワシントンで見たあのような絶望的手段に人を駆り立てるのはそのような激しいやり場のないイメージと感情です。 この危機的瞬間はまた、たくさんの機会の瞬間でもあります。私は貴方に、この機会にこそ、世界を暴力と苦しみから遠ざけ、全人類のために平和と自由と豊かさに導いてほしいのです。これらの絶望の声を聞かせてやってください、そして犯人たちを法定で裁いてやってください。私たちが、すべての人に法と正義を真に信じていることを彼らに見せてやって下さい。

ダーバンで最近犯した間違いは止めましょう、そうではなく、たとえ彼らが叫び、私たちが聞きたくないようなことを言っているとしても、テーブルについて全員の声を聞くようにしましょう。私たちは本当に強大な存在なのでいつも主張し、他の人たちは聞くのが当然のように思っています。私たちが他の人たちの声も聞くことができる勇気ある国民だということを世界に示そうではありませんか。貴方はキリスト教徒ですね、
ですから私は、貴方がイエスキリストが指導したことを正に行って性急に暴力にうってでるようなことをしないよう祈っています。この恐ろしい悲劇の中で、平和への偉大な機会を見い出す知恵を神が貴方にお与えくださるように。今世紀後に歴史家たちが振り返って、グローバル化する世界を、人類のために正義と民主主義に向わせた貴方の偉大な精神と冷静な理性を賛美することを私は願っています。

尊敬をこめて、

2001年9月13日(木)
グレッグ・ニーズ

《ダライ・ラマからブッシュ大統領への手紙》
ブッシュ大統領閣下

私は、ハイジャックされたと見られる4機の航空機が引き起こした計り知れない惨状と、貴国を襲ったテロリストの攻撃に深い衝撃を受けました。非常にたくさんの罪の無い生命が奪われるという本当にむごい悲劇です。
誰かがニューヨークの世界貿易センターとワシントンD.C.のペンタゴンをターゲットにするなど信じられないことです。私達は深い悲しみに沈んでいます。チベット人を代表して、深い哀悼の意と、この非常につらい時をアメリカの人々と共に分かち合っていることをお伝え致します。命を失った人々、怪我をした人、そしてこの暴力的な非常識な行為によって精神的な傷を負った多くの人々に私達の祈りを捧げます。本日、私は、アメリカ合衆国とアメリカの国民の為に、特別の祈りの法要をダラムサラのテクチェン・チューリンで行います。

私は、偉大で強い国アメリカ合衆国は、今回の悲劇を乗り越えることが出来ると確信しています。アメリカの国民は彼らの回復力、勇気、そして、このような困難と悲しみに直面した時の決断力を示してくれることでしょう。

私の立場から申し上げるのは、もしかいしたら僭越かもしれませんが、私は個人的には、長い目で見た時に、報復というような暴力的行為が国家や人民にとって本当にためになる正しい行為であるかどうかを、真剣に考えてみる必要があると信じています。
暴力はただ暴力の循環を増大させるだけだと思います。
しかしそれならば、憎しみや怒り(それは、しばしばこのような愚かな暴力の根源的原因となってきました)に、私たちはどのように対処したらよいのでしょうか。
これはとても難しい問題です。特にそれが国家に関係している場合に、またそのような〔愚かな暴力という〕攻撃に、どのように対処するかについて、やられたらやり返すという様な、ある動かしがたい観念を我々が持っている場合には。わたしはあなたがきっと正しい決断をされることと確信しています。

祈りと願いをこめて
ダライ・ラマ

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